昭和59年(1984)、弘前大学医学部で第49回日本民族衛生学会総会が開催されるに当たって、津軽に赴任して以来、撮りためてきた膨大な写真群の中から238枚の写真を選び、「人々と生活と」と題した1冊の写真集にまとめ、全国からの参加者に配布したものである。
この写真集は単なる記録写真集ではなく、衛生学者としての鋭い視点から撮影されたもので、随所に的確な文が添えられていて、学術的価値が高いものと評価できる。「衛生学者としての私は、そのシャッターシーンに何かを意識しシャッターをおしたので、一枚一枚にそれなりの意味があり、記憶に残るものがある」と序文に書かれている。先生の写真を読み解く者は、撮影の意図が奈辺にあったのか、逆に試されることとなる。
2万枚を優に超える膨大な写真は、ピントがぼけているものは殆ど無く、また、同じ構図の連続も殆ど無い。著名な民俗学者の宮本常一は、写真を撮るに当たって、「芸術写真は必要ない、1枚の写真から様々なことを読めるような写真、記録写真に徹するように」と語っていた。佐々木先生の写真も殆ど、宮本常一と図らずも同じ観点から撮影されていたことは間違いない。どの写真を見ても、隅から隅まで、ピントがピッタリあっている。その上、構図もプロ並みに素晴らしいものがある。この点については、専門家の方々に論考してもらえるとありがたい。
写真集は、1-リンゴ、2-米、3-たばこ、4-漁、5-むしろおり、6-衣、7-食、8-住、9-水、10-子、11-祭、と11テーマに分けられ、展開していく。いずれも、衛生学者としての視点から分類されたものであろう。